「地方巡察」22章、23章(カルテット番外編)をUPしました
- 2017.03.13 Monday
- 14:35
カルテット番外編「地方巡察」22章、23章を、小説家になろうで公開しました。
22章 http://ncode.syosetu.com/n1394cs/22/
23章 http://ncode.syosetu.com/n1394cs/23/ (終)
(もくじ http://ncode.syosetu.com/n1394cs/)
エル・ジェレフの物語「地方巡察」は、これにて完結です。
終章2章分が、一気に読み終えていただきたい内容に思えたので、まとめて公開しました。
読者様のご期待にそうようなオチになっているのか、はらはらしますが、こういう物語でした。
読んでどんな印象だったか、ご感想をいただけると嬉しいです。(「ジェレフ死ねばいい」とか……)
以降の記事は、あとがきです。
ネタバレを含みますので、完結まで読了後に御覧ください。
「小説家になろう」に移して執筆を再開してからでも、すでに2年近く経っていますので、予定外に長く書いている作品になってしまいました。頭のなかで思いつく時は、パシュムでの第一章から、ダロワージで族長が豆食ってるシーンまで、一瞬で脳裏をよぎっていくんですが、実際に書いたら2年も3年も(もっとか……?) かかってしまいました(汗
豆食ってるリューズを書きながら「やっと豆まで来たわ」と感無量だったです。
で……今回のこの話、どうでしたか……(´・ω・`)?
正直あまり自信がない、というか、完全無欠のハッピーエンドではないので、せっかく長い文字数を読んでもらったのに、なんかモヤっとしたわ(怒)という読後感にしてしまったのではないのかなあと、作者も今うつぶせに倒れています。
こういう話を書こうと思って書いたくせに、なんか自分でも傷ついてるから!
好きじゃない物語だったら、すみませんでした。今さらどうにもできないんですが。
いろいろ、メモを。
前回の、町長成敗の巻で、ジェレフは「俺も罪人になったのだ」などど言ってましたが、実はそういう事はないんです。ジェレフが言っていたのは、道義的な意味での罪の話しで、設定的には、この物語世界の英雄たちには、いわゆる「無礼討ち」の権利があることになっているので、ジェレフは実は最初に「町長ブッ殺す」と思った瞬間に成敗しても、法的には咎められない権利があったんです。
そんならなんで我慢したんやジェレフ!
それは、まあ、いくら権利があるとはいえ、運用に慎重を要す権利でもあるでしょうし、ちょっとムカついたからって、バッサバッサ斬り殺すようでは、まずいですよね。それに、黒エルフ族では、「同族殺し」を特に忌避する文化がある設定になっていて、よほどの理由がなければ、時には理由があっても、同族どうしで争ったり、殺し合ったりということが、社会的に非難されるのです。
それもあって、ジェレフは真面目なので、いきなり無礼討ちっていうのは考えなかったのでしょうね。融通のきかない人です。
さらに言えば、作中でも叙述がありますが、ジェレフは人を斬ったことがないのです。魔法戦士なのに!?
治癒者ですので、従軍して何度も大きな戦闘に参加していても、ずっと人の命を救うことに従事していて、ジェレフは敵を倒したことがないんです。攻撃用の魔法も持ってないですしね。
結局、アンジュールでさえ助けちゃったジェレフは、自分の手で人の命を奪った経験はないまま死んだんだと思います。船着き場で手を斬られた名前のないあの人が、逃げた先で死んでいなければですが。
それから、ジェレフと詩人のエピソードについて。
このラストシーンは、「深淵」という番外編のオチと相似形になるように書いたつもりです。
「深淵」でも詩人と話すシーンが最後の方にあります。この詩人と同じ人です。
「地方巡察」では、さすがに、詩人に名前をつけようかと悩んだんですが、無名のまま完結しちゃいました。
ジェレフって、この詩人と友達なんじゃないの? と書きながら思いました。友達いないし、みたいな事をジェレフは思っているみたいですが、実際には、友達いるんじゃないのかな?
ジェレフに「俺、友達いないし」と言われたら、「俺は友達ちゃうかったんかい!?」という人が王都に何人かいそうに思うんですが、ジェレフって奥手なんですかね?
そんなジェレフも、ハラル先生のことは、流石に友達だって気づいたみたいで良かったです。
ジェレフはたぶん、この物語のあともハラル先生と再会することは無かったのだろうなと思いますが、文通ぐらいはしたかもしれないです。パシュムの皆さんは、「紫煙蝶」で語られたような、ジェレフの最後の英雄譚を、どんな気持ちで聴いたんだろうなあ……と想像します。ネフェルお婆ちゃんが健在なうちに、ジェレフは死んでしまったんでしょうか。
そのあたり、物語の先行きと関係がないので、作者である私も決めていません。
それから、アイシャです。
いろいろな観点から、ジェレフのパシュム滞在期間は、一ヶ月半ほどだろうということに。
物語の序盤で、アイシャが、ジェレフと最初に寝た時、生理だったの、という話をしています。そこから一ヶ月ちょい、アイシャは次の生理が来ないことは、気づいていたはずだ、と作者は想像するのですが、作中、アイシャ本人による詳細な供述はありません。
船着き場で別れる時に、アイシャは自分が妊娠しているかもしれないことは、知っていたと思います。
シェラルネの手術のあと、医院の裏庭でジェレフと話していて、このままジェレフと王都に行くことはできないし、行ったら行ったで迷惑がかかるし、自分と子供の身にも危険があるというのを一瞬で悟って、180度転進できるアイシャは、すごく賢い子なんだろうなって、書きながら思いました。打算的といえば打算的だけど。苦労して育った彼女は、現実は容赦がないものだって、分かってるのでしょうね。
書きながら、ちょっと、アイシャは実家を出ていきたくて、ジェレフを利用しようとしたのかな、とも思いました。
もしそうなら、ジェレフはまんまとハメられてるんだけど。
それとも、アイシャはそこまで深くは何も考えていないのかな?
アイシャは視点キャラクターじゃないので、彼女が実際なにをどう考えていたのかまでは、あえて設定していません。いろいろ、読む人ごとに、想像の余地があるほうがいいかなと思います。(あんまり心浮き立つ想像にはならないですが、汗)
私は、自分が母親の立場なので、アイシャは仮に始めは家を出たくてジェレフをたらしこんだけど、妊娠したら子供のほうが大事になっちゃって、お腹の子供を守ろうとしたんだ、というような空想もします。でもまだ妊娠8週で、そんなこと思うかな? という気もするし。どうなんでしょうか。
とにかく、彼女は、彼女自身とお腹の子にとって、最善とおぼしき策をとって、成功にこぎつけました。よかったなと思います。
一方、ジェレフのほうは、玉座の間の豆のシーンで、アイシャは地方議員と結婚した、という話を聞いて、ぜんぜんショックを受けません。書きながら私は「まじかジェレフ!? ガーンとか無いのか!?」と思いました。だって……ガーンとかあるやん、普通。ないの?
なんでないんや……と思ったけど、そういえばジェレフは元々、ダロワージの恋は一瞬の華だっていう人なんでした。昨日寝た女と翌日には別れちゃうような男なんです。ドロドロ絡み合う恋愛関係が苦手なんですって。(他人事な作者)
そんなのなあ……特定の相手と真正面から恋愛する勇気がないだけやろ!? むかつく! って思うんですが、とにかくそういう人物で、自分がつきあってた相手が他のとくっついたり、その逆であるとかは、ジェレフにとっては日常茶飯事で、特にショックを受けないみたいです。王宮育ちの異常さということなのでしょうか。
ジェレフは、何となく「パスハの南」以降ずっとサフナールが好きみたいに作者は感じているのですが、そのサフナールが、族長とデキてても、特になんとも思わないのだし、平気で3人で飯食ってんのだし……ジェレフって変だよね。
そもそも、サフナールが拝命するはずだった地方巡察の任を、「あたし生理だし行きたくないから、あんた行って」と頼まれ、わかったって代わってやるあたりも、ジェレフ怪しい。普通、代わらないんじゃないでしょうか、そんなの。派閥抗争の敵なのに、なに間抜けなことやっとんねんジェレフ、って、周りはみんなビックリしたんじゃないのかな。
でも、サフナールが好きなので、頼まれると断れなかったのかな……って思うと、ジェレフ可哀想、って思えます。
だが社会人として直情的すぎる。
だから「紫煙蝶」で死ぬことになるんだよ!
あれも、サフナールはじめ大勢の治癒者が死ぬかもしれないが、自分ひとりが頑張って死ねば、何人か助かるという計算の上で、頑張っちゃったのかなという読みもできるし、なんだかアレです。モヤっとします。
ジェレフが結局、幸せだったのかどうか。良くわからない。
最後までモヤモヤするキャラクターでした。
そんなエル・ジェレフが登場する物語は、これで全部書ききったと思うので、作者もジェレフとお別れです。
もしまたどこかで書く機会があったら嬉しいなと思います。モヤっとするけどね!
最後に、物語の最後の最後にある、「後年、パシュムはハラル医師のもと、……」以降のところを、書くか、やめるか、凄く悩みました。
「地方巡察」は一貫して、三人称ジェレフ視点で書かれています。だから、ジェレフの目を通していない物事は、書けないのがお約束です。しかし、「後年〜」以降の文章は、三人称神視点というやつで、しかもジェレフの死後の出来事なので、小説を書く上での技術的なルールに則ると、書けないことになります。
だけど、この数行は、あったほうが、読者さんはスッキリするのかな? ご想像におまかせ、ってするよりは、こうなったんだよという話を明記してあるほうが、読後感がいいかな、と悩んで、自分がこの周辺の物語を書く機会がこの先なさそう(別の作品で補完するのは無理そう) なことも考え、技術的にはアウトだけど、別にこれ販売とか、新人賞に応募する作品なわけじゃないしと居直って、ルール無用の最終行を付け加えて公開することに決めました。
でもこれ、蛇足なのかな、って、今も悩んでいます。いつのまにが数行消えてたら、「椎堂さん……気が変わったんやな」って、フッと静かに笑ってください。
長いな、言い訳!
他に言い残したことが、もしあれば、またTwitterがどこかでブツブツ言ってると思います……(^_^;)